MWC 2025はAIがメインテーマ?
2025年3月3日からバルセロナで開催されたMWC 2025に行ってきました。ご存じの方も多いと思いますが、MWC(Mobile World Congress)は毎年春先にバルセロナで開催される携帯電話関連の世界最大の展示会で、多くのスマホメーカーや通信キャリア、基地局ベンダーなどが出展しています。今年のMWCの最大のテーマはやはり「AI」でした。驚くような展示があったわけではありませんが、各社何らかの形でAI関連の取り組みを発表しています。
2017年9月にサンフランシスコで開催されたMWC Americaについて書いたコラムを読み直してみると、8年前に目立っていたテーマは「5G」と「IoT(Internet of Things)」だったようです。
5Gの商用サービスはアメリカ、韓国で2018年末から、日本は2020年4月から始まっています。しかし開始前に謳われていた「超高速、大容量、低遅延」な通信サービスが実現したという実感はあまりないです。5Gならではのサービスが始まったわけではなく、速度についても4Gとの差を感じていない方が多いのではないかと思います。技術的に可能であることと、収益性を踏まえた商用サービスでは差があるということですね。
一方のIoTも、家電や照明をスマホや音声で操作したり、当時よくIoTの例として言われていた「冷蔵庫が食材を管理して買い物リストや料理レシピを提案する」というスタイルが一般的になったようには思えません。ただし、通信モジュールを内蔵した家電は徐々に増えてきていますし、「IoT」などと意識せずに自然に普及していくものはあるのでしょう。
AIも同様なのかもしれません。現在、多くの企業が様々なサービスを検討していますが、それらのなかには消費者が「AI」と意識することなく当たり前に使うようになるものもあるのでしょう。5年後、10年後の答え合わせや、その時のMWCのテーマがどうなっているのかとても興味があります。
折りたたみスマホのこれから
これまでMWCでは多くのメーカーが携帯電話、スマートフォンの発表や展示をしてきましたが、徐々に端末メーカーの出展は減ってきています。今年のMWCで単独ブースを出していたのはHuawei、Samsung、ZTE、Xiaomi、HONORあたりです。Samsungを除くと中国メーカーが中心となっているのはここ数年変わりませんね。
その中で折りたたみスマホを展示しているメーカーもいくつかありました。
Xiaomi MIX Fold 4 HONOR Magic V3
共通して言えるのは、どのメーカーのモデルも本当に軽くて薄くなっているということです。折りたたんだ状態では普通のスマホと変わりません。ディスプレイやヒンジも似通っているので、同じメーカーの部品が採用されているのかもしれません。
折りたたみスマホは、2018年にRoyoleという中国のスタートアップ企業が販売を開始しました。2019年にはSamsungやHuaweiも投入、その後もOppo、Xiaomiなどの中国メーカーが製品を投入してきました。Royoleは当初はMWCやラスベガスで開催されるCESというエレクトロニクスの展示会でも話題になっていましたが、大手メーカーとの競争に勝てず2024年に倒産しています。
登場から6年が経過しましたが、折りたたみスマホのシェアはさほど増えていません。調査会社によるとスマホ全体の出荷台数における折りたたみスマホの比率は1%台とのことです。普通のスマホも大量に販売している大手メーカーと違い、折りたたみに特化した新興企業が生き残れなかったのは当然かもしれません。
折りたたみスマホの普及が進まない理由は
- 価格が高い
(横折りの大型のタイプは25~30万円) - 普通のスマホと比較して使いにくい
(分厚い、重い)
というような理由が挙げられるでしょう。
ただしMWCで展示されている最新機種を見る限りでは、2の問題はかなり解消されているように感じました。製造数が増えてくれば価格も徐々に下がってくることが期待できますので、これからシェアは上がってくるのではないかと思います。
折りたたみスマホの薄型化には、端末メーカー、部品メーカーの努力が詰め込まれています。一番の特徴であるヒンジ(折り畳み部分)の設計もかなり進化しているようですが、それ以外にもさまざまな要素があります。
Samsung Displayのブースではポラライザー(偏光板)が不要な新しいタイプのOLEDが展示されていました(下の写真の「Pol-les」)。これらが折りたたみに活用できるものなのかわかりませんが、薄型化にはこのような技術革新も影響するのですね。液晶(LCD)と比較すると構成パーツはとても少なくなっています。通常はパーツが減るほど薄型化とともに消費電力も減少することが期待できますので楽しみですね。
HONORのブースではスマホ用バッテリーの展示もされていましたが、バッテリーも薄型化と大容量化が進んでいるようです。
ケースの中だったので正確な厚みは分かりませんでしたが、3mmはなさそうな薄さで5,000mAhを実現していました。ちなみにiPhone 12 Proのバッテリー容量は3,582mAhです。
三つ折りスマホはどうか
Huaweiのブースには2024年9月に発売した三つ折りスマホが展示されていました。日本では売られていないモデルなので現物を見るのは初めてです。拡げた時はとても薄いですね。凄いとは思いますが折りたたんだ時はどうしても+1枚のせいで分厚くなってしまうのと、手に持つとやはり重たく感じます。さらに販売価格は50万円とのことですので現段階での普及は期待できないですね。Huaweiの技術力を示すために投入された製品というところでしょう。